
- はじめに
- コロナが農業に与えた影響
- コロナ禍で見直される“小さな農業”
- 耕作放棄地の有効活用
- まとめ~今後の農業について~
1.はじめに
2020年1月中国武漢で新型コロナウイルスの感染拡大のニュースを見た時に「100年に一度の」の大規模なパンデミック(世界的大流行)を想像した人は少なかったと思います。
私もその一人で、初めて見たニュースから3カ月後には日本でも緊急事態宣言が出される事態になるとはその時は想像すらしなかったことです。
三密の回避や新しい生活様式の推奨など日常生活も大きく変化しました。
1年以上過ぎた今でもコロナは収束することがないどころか変異株による第4波が深刻な状況です。
そんなコロナ禍の影響は様々な分野に影を落としました。
飲食店・観光業・ホテル旅館業・音楽業界…
そして日本の農業にも大きな影響を与えました。
2.コロナが農業に与えた影響
時短営業や会食がなくなった影響で外食産業への需要は激減しました。
季節行事に合わせ何カ月も準備してきた農家の人たちの落胆はいかがなものだったか計り知れません。
農産物は工業製品と違い、一年サイクルで種まきから計画し収穫してやっと収入になります。収穫のタイミングでの今回のようなコロナや自然災害は発生すると一年間投資してきた労働力とお金は水の泡となります。
特に季節行事に合わせ大量生産し収入を得ている農家はより被害が大きく今回のコロナで見えてきたのは毎年季節行事が必ずしも行われるという保証はないという事に気づかされました。
つまり今までグローバル社会に偏った農業政策である大量生産・大量消費社会からの転換が求められているのではないかということです。
コロナ禍によって食料輸出国の一部では、自国民の需要を優先するため米や小麦の輸出を制限する動きが広がりました。
これは輸出国は国内の食糧安全保障を優先し輸出を規制し、輸入国の思い通りに食料は入らない事態もあり得るという事です。
日本の食糧自給率は37%しかありません。輸入が途絶えれば食料不足に陥ることは目に見えていますので「自給率の向上を」という議論を日本社会全体が始めるきっかけをコロナはもたらしたと思います。
日本の農業政策はグローバル化に偏った方向に進んできましたが、これを機に国内でまかなえる食料は出来る限り自給し、農業を支えている小規模農家や新規就労農業者を含めた多様な担い手を総合的に支援する方向に転換するべきです。消費者が国産の野菜や穀物、肉を手に取りやすくすれば安心で健康な食生活につながり、産地と都会がつながれば地方や農業の魅力が消費者に広く知られ、地方移住者の増えるきっかけになるのではないか?
食や農業の自給を高めることは、コロナ禍でみえてきたグローバル経済と大都市への人口集中の弊害を大きく変えるきっかけになったと思います。
3.コロナ禍で見直される“小さな農業”
このような困難な状況の中で、食への関心が高まった消費者とSNSやインターネットを介してつながりを築き農薬や化学肥料を使わず育てた野菜を届けたりおいしい食べ方を紹介したりして利益をえる家族規模で営む中小規模の“小さな農業”が注目されています。
こうした農家に共通するのは、必要以上に儲けを追求しない持続型でワークライフバランスのとれた暮らしを求めえていること。価値観の変化が後押ししているのです。
このような動きは世界中でも起きており、国連は家族によって経営される農業を改めて見直し、2019年から10年間を「家族農業の10年」とし、その保護と支援を呼び掛けています。
4.耕作放棄地の有効活用
コロナ禍となりテレワークが進む一方で改めてグローバル経済によって大都市へ一極集中していたこれまでの価値観も変わってきたと言えます。
コロナ禍で“小さな農業”が注目されていますが一方で農業人口の高年齢化による農業人口の減少は加速しています。そのため農業をしないにも関わらず農地を放棄するというケースが増えています。つまり耕作放棄地です。しかしこの放棄地は農業をしないにもかかわらず農地として放出されることがないというのが現状です。
農家にとって農地は先祖代々受け継ぐ大切な財産です。従って、高齢になって農業をしなくなっても農地を譲るというのは覚悟がいることなので自ら積極的に売るということはあまりありません。
また農地を相続した後継者も、自分が農業をしなくても、敢えて急ぎ売るという誘因はないので放置される状況が多く見られます。
つまり、農業をおこなう人が減って、尚且つ農業をしないにも関わらず農地が放出されないという悪循環となるケースが多いのです。
これら耕作放棄地は様々な問題が多く、農地の状態の悪化、雑草や害虫・鳥やイノシシなどの害獣被害、ゴミの不法投棄など様々な悪影響が近年、深刻な問題となってます。
これら耕作放棄地の活用は農地への様々な規制もあり活用方法も制限されていますが、政府の農業改革への取り組みもあり、その選択肢は増えつつあります。
このコロナ禍で見えてきた価値観の変化による仕事環境の在り方、価値観の変化は我々が今後このような耕作放棄地の解消に向け様々な取り組みを農地所有者、地方自治体関係各所の協力のもと有効に利用し日本の農業の活性化に真摯に取り組み、新しい需要と供給のマッチングのお手伝いをすることが大切なことだと思います。
5.まとめ~今後の農業について~
このコロナ禍で様々なことが見えてきました。
家族や友人、職場の仲間との絆をはぐくむ大切なコミュニケーションの塲面で食事という時間がいかに大切であったか実感しました。
コロナ前では当たり前だったことが当たり前でなくなったことは多くありますが人は皆、“食べること”が生きる事の基本にあるという事が今回のコロナ禍で改めて認識したことです。
ウーバーイーツをはじめ食事のケータリング業界の飛躍が著しいことからも、また巣ごもり需要でお取り寄せ需要が高かったことからも充分お分かりいただけると思います。
あたりまえに食料を大量生産・大量消費していた時代は、コロナや環境問題・自然災害の毎年の著しい増加を鑑みると厳しい時代に入ったと思います。
これからの農業は国内でまかなえる食料は出来る限り自給することが大切になり、今までの農業家はもちろん、小さな農業家や新規就農者含め多様な担い手を総合的に支援することが大切だと思います。
「大規模・集中・グローバル」が今の農業政策の原理だとすると、これがコロナウイルスの爆発的流行の背景にあります。
「小規模・分散・ローカル」の循環型農業へ転換を図ることで未来志向的なこれからの日本の農業政策となるのではないでしょうか?